暑さも和らぎはじめた9月1日、セミナープラス南町田で第2回「南町田のまちのがっこう」が開催されました。

第1回目のワークショップでは「ひとりひとりの趣味や特技でまちをステキにする」とはどういうことかをふたりのゲストのお話から学びました。第2回目となる今回は、本を使って「自分のお気に入り」を紹介し、11月3日に予定されている「まちのがっこう祭」でどんなことがやりたいかを考えていきました。
自分たちで場を育てる
1時間目は、第1回ワークショップの振り返りと、全5回のワークショップを通じて「自分のお気に入り」を持ち寄ることからまちをステキにしていきたいというテーマが改めてお話されました。また、前回に引き続き講師として参加していただいた「まちライブラリー」提唱者の磯井純充さんからは「まちライブラリー」の簡単な説明と、参加者へのメッセージをいただきました。
磯井さん「まちライブラリーはただのライブラリーではなく、本を使って人とつながり、それを自分たちの居場所にしてしまおうというものです。図書館みたいな場所なので、子どもから大人まで、誰でも来やすいんですね。あるまちライブラリーでは、日がな1日本を読んでいる人もいれば、何かの発表をしたり、仲間を呼んでイベントをやったりする人もいます。誰かが用意してくれた場所を「自分たちで育ててみませんか?」というのがまちライブラリーのやり方なんです。たとえば本はすべて寄贈で、行政も企業も1冊も買いません。じつは今回、南町田にもまちライブラリーをつくる計画があります。もちろん無理に何かやらなければいけないわけではありませんが、場所はあるので、何かやりたいという人がいれば手を上げて、仲間がどんどん集まればとてもいいことなんじゃないでしょうか。今回のワークショップはまちライブラリーと直接関わるものではありませんが、そういうプロセスをぜひ体験してほしいと思っています」
人の数だけ、お気に入りの本がある
続いての2時間目は「本を使って自己紹介をしよう!」。参加者には、事前にお気に入りの1冊を持って来てくれるようお願いしていました。まず2人1組になり、相手にお気に入りの1冊を紹介する形で「自己紹介」をしてもらいます。大好きな本を紹介するとなると、ただの自己紹介と違ってどの方もいきいきと話し始めます。みなさんの手元をのぞいてみると、実用書もあれば、絵本や童話、小説、エッセイ、ビジネス書にマンガ、なぞなぞ本まで、じつに多種多様。人の数だけ、好きな本があるのだと、見ているだけでも楽しくなりました。
お互いの自己紹介が終わったら、今度は同じテーブルの中で、お話を聞いた相手の「他己紹介」にチャレンジです。
たとえば、ある方が持っていたのは「燻製入門」。他己紹介によると、定年退職を機に群馬県に小さな山小屋を購入して趣味の料理を楽しんでいるのですが、今いちばんはまっているのが燻製とのこと。ある方は、小さい頃から細かいものをつくるのが好きで、スイーツデコのアクセサリーをつくって販売していると紹介されました。持ってきたのは、スイーツデコのつくり方が載った本です。
キノコが大好きでキノコ検定2級をもっている方はキノコの本を、図書館で働いているという方は各自が興味のある新聞や雑誌の記事を持ち寄ってつくる「まわしよみ新聞」についての本を持ってきていました。コーヒーが好きな方はコーヒーにまつわる小説集を、唯一参加していた小学生は「東大ナゾトレ」というものすごく難易度が高いナゾナゾの本を「2年かけて解いた問題もある」とお話してくれました。
他己紹介が終わると席替えです。本を持って席を移動し、同じような本を持っている人や気になった本を持っている人に声をかけ、再び2人1組になります。気になった人同士ということで、始まる前からどのペアも盛り上がっています。話しているうちに「ひょっとして食つながりで一緒に何かできません?」「それだったら手伝うわ」といった話も自然と飛び出していきました。
「まちのがっこう祭」でやりたいことを考えよう
参加者の趣味やお気に入りがわかったところで、3時間目は「まちのがっこう祭でやりたいことを考えよう!」と題して、自分が「まちのがっこう祭」でやりたいと思うことを考えてもらい、やりたいことシートに記入してもらいました。ポイントはあくまで「ひとりひとりのお気に入りや好きなことをふるまう」こと。あまり無理のある計画や大きな企画にはせず、無理なく楽しみながら実現可能なふるまいは何かを意識して考えてもらいました。なかなか思いつかない人もいるのでは、と思いましたが、みなさんすぐにペンを取り、スラスラとシートに書き込んでいきます。本の紹介をし、周りの人と話をしているうちに、自分がやりたいことが見えてきたのかもしれません。
その後、テーブルごとに自分のやりたいことを発表し、感想や意見をもらいました。映画の自主上映会をやりたいという人、読み聞かせや紙芝居をやりたいという人。ワークショップをやりたい人、作品を展示したい人、合唱をやりたい人、ヨガをやりたい人。とにかくひとつとして同じアイデアはありません。さらに「こういうこともやってみたい」「これとこれを同じブースでやったら面白いかも!」というさらなるアイデアも聞こえてきました。
最後に、各テーブルの代表者が、参加者から出された「やりたいこと」を全体に発表しました。じつはみなさんのお話を聴きながら、ファシリテーターががっこう祭当日のイメージをホワイトボードに描いていました。発表を聞きながらその絵を見ていると「ひとりひとりのやりたいことが集まると、こんなに楽しそうなイベントが生まれるんだ!」とワクワクしてきます。がっこう祭が楽しいイベントになる予感を、この場にいた誰もが感じたのではないでしょうか。講師の磯井さんからも「すばらしい!」とコメントをいただきました。
磯井さん「これを実現して、ぜひ南町田モデルをつくっていただきたいですね。今回の人間関係は、今後の自分のリソースにもなっていくと思うし、このまちに住んで良かったなぁという感じがどんどん出てくるんじゃないかと思います。そして「南町田グランベリーパーク」がオープンしたあとまでつながっていけば、非常に面白いことになっていくんじゃないかなと思います」
次回9/22のワークショップでは、このアイデアの種を実際にどのように形にしていくのか、当日のレイアウトをどうするのかなど、具体的な企画づくりに入ります。ひとりひとりのやりたいことが、自然とまちをステキなものにしていく。そうした個々の力の大きさを、確かに実感できた1日でした。
参加者の感想
S.Uさん(60代・男性)
これだけの個性が集まるといろいろな発想が出てきて「そういうやり方があるんだ」と驚かされました。体育館という限定された場所でどうするのか、その中での工夫がいろいろなところから出てくるのが、すごく面白かったです。
N.Mさん(30代・女性)
どうなるんだろうってわからないままに参加してみたけど、場に任せたらいろいろなものが生まれて、とても面白かったです。「やりたいことはありません」って言っていた人も、最後にはやりたいことをいっぱい喋っていました(笑)。「人と人が集まって話し始めるといろいろなものが生まれるね」と、みなさんとも話していました。普段関われないような分野の方と話ができたのも楽しかったです。
N.Nさん(30代・女性)
私は、やりたいことやアイデアがたくさんあるんですが、それを外に発信する機会がありませんでした。ほとんどひとりで仕事をしているので、人とコミュニケーションをとるチャンスもなかなかないんです。こういうところにくるといろいろな考えをもっている方と出会えますし、自分が発したことに返してもらえるだけでも有意義だと思って参加しました。書道の師範の資格を持っているので、がっこう祭では、書道パフォーマンスをやってみたいと思っています!